論文 · arXiv 2203.02155
人間のフィードバックを用いた指示追従言語モデルの訓練
Training language models to follow instructions with human feedback
3行まとめ
- 次トークン予測のみで訓練された大規模言語モデルは、ユーザーの意図に沿えないことが多く、有害、不真実、または役に立たない回答を生成する。
- 人間による教師ありデモンストレーションを用いてGPT-3をファインチューニングし、ランク付けされた出力で6Bの報酬モデルを訓練し、事前学習データの混合を伴うPPOを介してポリシーを最適化。
- 1.3BのInstructGPTの出力は175BのGPT-3よりも好まれ、175BのInstructGPTは175BのGPT-3に対して85%の勝率を記録し、ハルシネーションを41%から21%に削減。
概要
言語モデルの大規模化は、本質的にユーザーの意図に従う能力の向上に直結するわけではありません。例えば、大規模言語モデルは不真実、有害、あるいは単にユーザーにとって役に立たない出力を生成することがあります。言い換えれば、これらのモデルはユーザーとアラインされていません。本論文では、人間のフィードバックを用いたファインチューニングを通じて、広範なタスクにおいて言語モデルをユーザーの意図にアラインさせる手法を示します。アノテーターが作成したプロンプトやOpenAI API経由で送信されたプロンプトから着手し、望ましいモデルの挙動を示すデモンストレーションのデータセットを収集して、これをもとに教師あり学習でGPT-3をファインチューニングします。次に、モデル出力のランキングデータセットを収集し、これを用いて人間のフィードバックによる強化学習(RLHF)により教師ありモデルをさらにファインチューニングします。この結果得られたモデルをInstructGPTと呼びます。プロンプト分布における人間の評価において、パラメータ数が100分の1であるにもかかわらず、1.3BパラメータのInstructGPTモデルの出力は175BのGPT-3の出力よりも好まれました。さらに、InstructGPTモデルは公開NLPデータセットでの性能低下を最小限に抑えつつ、真実性の向上と有害な出力生成の削減を示しています。InstructGPTは依然として単純な誤りを犯すものの、我々の結果は人間のフィードバックを用いたファインチューニングが言語モデルを人間の意図にアラインさせるための有望な方向性であることを示しています。
英語の原文概要
Making language models bigger does not inherently make them better at following a user's intent. For example, large language models can generate outputs that are untruthful, toxic, or simply not helpful to the user. In other words, these models are not aligned with their users. In this paper, we show an avenue for aligning language models with user intent on a wide range of tasks by fine-tuning with human feedback. Starting with a set of labeler-written prompts and prompts submitted through the OpenAI API, we collect a dataset of labeler demonstrations of the desired model behavior, which we use to fine-tune GPT-3 using supervised learning. We then collect a dataset of rankings of model outputs, which we use to further fine-tune this supervised model using reinforcement learning from human feedback. We call the resulting models InstructGPT. In human evaluations on our prompt distribution, outputs from the 1.3B parameter InstructGPT model are preferred to outputs from the 175B GPT-3, despite having 100x fewer parameters. Moreover, InstructGPT models show improvements in truthfulness and reductions in toxic output generation while having minimal performance regressions on public NLP datasets. Even though InstructGPT still makes simple mistakes, our results show that fine-tuning with human feedback is a promising direction for aligning language models with human intent.
論文解説
問題意識と動機
標準的な大規模言語モデル(LLM)は、Webコーパスにおける次トークン予測を最適化します。この事前学習の目的関数は、アシスタントが役立ち(Helpful)、真実性があり(Truthful)、無害(Harmless)に指示に従うことを求めるユーザーの目標とは乖離(ミスアライン)しています。その結果、GPT-3のようなベースラインモデルは頻繁に事実を捏造(ハルシネーション)し、架空の文脈を作り出し、有害なテキストを反映したり、明示的なユーザーの制約を無視したりします。モデルパラメータをスケールアップするだけでは、これらの問題は解消されません。
主要なアイデア
- 人間のフィードバックによる強化学習(RLHF)を通じたアライメント: 人間の評価を用いて、モデルの出力を単なる続きの尤度ではなく、ユーザーの意図に沿う方向へと誘導します。
- 3段階の訓練パイプライン: (1) プロンプトとデモンストレーションのペアによる教師ありファインチューニング(SFT)、(2) ランク付けされた出力に対するペアワイズ比較を用いた報酬モデル(RM)の訓練、(3) Proximal Policy Optimization (PPO) を用いたポリシー最適化。
- アライメント税(Alignment Tax)の緩和: 標準的なPPOファインチューニングは、標準的なNLPベンチマーク(例:SQuADv2, DROP)での性能低下を引き起こします。PPOの更新に事前学習分布の勾配を混合する(
PPO-ptx)ことで、人間の選好における改善を損なうことなく、これらの能力低下を緩和します。
手法(主要な数式を含む)
- 教師ありファインチューニング(SFT): アノテーターが作成し、OpenAI API Playground経由で送信された約13k件のプロンプトデモンストレーションを用いて、ベースとなるGPT-3モデルをファインチューニングします。
- 報酬モデルの訓練: 各プロンプト に対し、アノテーターは 個の出力()をランク付けし、 個の比較を生成します。6Bの報酬モデル は、バッチ要素内のすべてのペアに対するペアワイズ交差エントロピー損失を用いて訓練されます: ここで は よりも好まれる出力を表します。
- RLポリシー最適化(PPO-ptx): スカラー報酬に対してポリシー を最適化しつつ、トークンレベルのKLダイバージェンスによってSFTモデルからの乖離にペナルティを与え、オプションで事前学習の対数尤度を維持します: ここで はKLペナルティ係数、 は事前学習勾配の混合比率を制御します。
実験結果(重要な数値)
- 人間の選好: アノテーターは、1.3BのInstructGPTモデルの出力を、175BのベースGPT-3の出力よりも好みました(100倍のパラメータ差)。175BのInstructGPTの出力は、175BのGPT-3に対して の割合で好まれ、few-shotプロンプトを与えた175BのGPT-3に対しても で好まれました。
- 真実性とハルシネーション: TruthfulQAにおいて、InstructGPTはGPT-3と比較して約2倍の頻度で真実かつ有益な出力を生成しました。クローズドドメインのAPIタスクでは、ハルシネーション率が41%(GPT-3)から21%(InstructGPT)に低下しました。
- 毒性(Toxicity): 敬意を払うようプロンプトを与えた場合、RealToxicityPromptsにおいてInstructGPTはGPT-3よりも約25%少ない有害出力を示しました。
- 汎化能力: 訓練データの96%以上が英語で構成されていたにもかかわらず、InstructGPTはホールドアウトされたアノテーター(一致率 )や、コードのQA/要約、英語以外の指示といった分布外の指示にも確実に汎化しました。
限界と未解決の課題
- 安全性とアライメントのトレードオフ: InstructGPTは訓練中、主にユーザーの指示に従うことを優先します。悪意のある指示や偏った指示が与えられた場合でも、その指示を効果的に実行してしまいます。
- 単純なエラー: モデルは依然としてハルシネーションを起こし、認識論的謙虚さの調整により過度に自己防衛的な回答(hedge)をすることがあり、偽の前提や複雑な複数の制約を課された場合に苦戦します。
- 代表性: ファインチューニングは契約者のフィードバック(雇用された約40名のアノテーター)とAPI Playgroundの顧客クエリに依存しており、エンドユーザーの幅広い層を完全には捉えられていません。
重要用語
- RLHF
- Reinforcement Learning from Human Feedback(人間のフィードバックによる強化学習)。人間の選好から報酬モデルを訓練し、強化学習を通じてポリシーをファインチューニングする手法。
- InstructGPT
- 自然言語の指示に従うよう、教師ありデモンストレーションとRLHFを用いてファインチューニングされたGPT-3モデル群。
- Alignment tax
- アライメント税。言語モデルを人間の選好にアラインさせる際に、標準的なNLPベンチマーク(DROPやSQuADなど)で観察される性能低下のこと。
- PPO-ptx
- ベンチマーク能力を維持するために、事前学習データの勾配をRLファインチューニングの目的関数に混合するPPOの派生手法。
- Reward Model (RM)
- 報酬モデル。プロンプトと完了のペアに対してスカラー値を割り当て、代替となる完了に対する人間の選好を予測するよう訓練されたモデル。
- Supervised fine-tuning (SFT)
- 教師ありファインチューニング。人間が作成したプロンプトとデモンストレーションのペアを用いてベース言語モデルをファインチューニングする、アライメントパイプラインの第1段階。
- Hallucination
- ハルシネーション(幻覚)。要約や質問応答などのクローズドドメインタスクにおいて、言語モデルが根拠のない情報や捏造された情報を生成すること。
よくある質問
なぜ1.3BのInstructGPTが人間の評価で175BのGPT-3を上回るのですか?
ベースとなるGPT-3は、フィルタリングされていないWebテキスト全体での次トークン予測を最適化しているため、指示を無視したり文脈を繰り返したりすることがよくあります。InstructGPTは、役立つ直接的な回答を生成するよう人間の選好シグナルに基づいて明示的に最適化されており、単純なパラメータ能力とタスク意図のギャップを埋めているためです。
この論文ではアライメント税をどのように解決していますか?
PPOの訓練目的に事前学習の更新項を組み込み(PPO-ptx)、事前学習の勾配に係数 を乗算することで解決しています。これにより、人間の選好における勝率を損なうことなく、SQuADやDROPなどの公開データセットでの性能低下を防いでいます。
ランク付けされた出力に対して報酬モデルはどのように訓練されましたか?
アノテーターはプロンプトごとに 個の完了( は4から9の間)をランク付けしました。6Bの報酬モデルは、1つのバッチ要素内のすべての 個のペアに対して同時に訓練され、フォワードパスの削減と過学習の防止が図られました。
InstructGPTは人口統計学的バイアスを低減しますか?
いいえ。WinogenderおよびCrowS-Pairsで測定した際、InstructGPTはベースのGPT-3と比較して有意なバイアスの低減を示さず、敬意を払うプロンプトを与えるとエントロピーが低下し、測定されるバイアスが増加することがありました。
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